改元の年(その2)



改元の年(その2)

 

今さら嘆いてみても仕方がないのだが、ヒトやモノの名前が直ぐに出てこないのは日常茶飯事、読むことにまったく苦労しないが書くとなると手に負えない漢字が日増しに増える。小学校5〜6年生の頃は「書取りテスト」でビシビシ絞られた。60名ほどのクラスであったがトップからビリまで成績順に名前が毎日のように公表される。子供心にこん畜生負けるものかと仲間たちと意地を張り合い、小学生の領域を超えた漢字まであれこれ憶えて得意になっていた。

 それがどうだ。毎日3行ほどの日記を書くのに国語辞典のお世話にならない日は殆どない。急激な在庫の減少は心細い限りなのだが、残り少ない在庫も漢字というより「こんな感じかな」という感字になっているものが多い。例えば「あそこには横棒が一本入っていたか、いなかったか」というようなケース。過日、推薦の「薦」で一苦労した。パソコンなら変換してもらえるが手書きの日記となると感字では済まされず、国語辞典の出番になる。メガネのコマーシャルではないがこれがまた細かくてどこがどうなっているのかハッキリしない。そのメガネをかけた上に拡大鏡を使って漸く横棒一本の位置を知る始末だ。

 イントロのつもりの話が長くなってしまった。差し迫ってきた改元にどのような漢字が使われることになるのか少々気になってきた。改元に絡んで頻度の高い文字などの一覧表もしばしば目にする。240余りの年号に使われた漢字は僅か72というから、繰り返し同じ文字が使われることになる。永、元、天、治、応、正、長、文、和、安 がベストテンで、永は29回、元・天がそれぞれ27回、10番目の安でも17回も出現している。これらの文字が必ず使われるということではないが、10番目だけは次の年号に絶対に出てきて欲しくないと願っている。

 ところで、改元の年は連勝の消える年というジンクスに嵌まった犠牲者がまたまた現れた。将棋の藤井聡太クンが順位戦の19連勝を狙って頑張ったが5日に敗れてしまった。囲碁の井山五冠は目下、名人戦を3勝1敗とリードし月末の第5局で無事ジンクスを逃れることが出来るかどうか。一方、9日の朝刊では「小平 連勝37で止まる」という三段抜きの見出しが目に飛び込んできた。スピードスケート世界距離別選手権で無敵の女王が3年ぶりに敗れた。100分の2秒の差が「改元の年」のネタをひとつ提供したのだった。そして12日には一瞬耳目を疑うようなニュースが世界を駆け巡った。しかし、池江璃花子選手をこの雑文の一事例として取り上げるような無神経なことはしないのでご安心頂きたい。ひたすら彼女の快癒を祈っている。

 
 

                           平成31年2月23日 佐々木 康雄記